top of page

――……て

…きて

ねぇ、起きて

​遠くで声が聞こえる。

誰かに体を揺らされて、その振動で意識が覚醒していく。

カットイン1_3.png

目を覚ますと、目の前には見知らぬ少女がいた。

​起きた

えっと、君は誰?

​ここは?

あなた、自分が誰か分かる?

え?自分が誰か?…………あれ

彼女はため息をついた。

そう、あなたもなのね

え?

私も分からないの

それまでのことを思い出そうとしても何も思い出せない

自分自身のことでさえも

彼女に言われて、

自分が誰なのか、どうしてここにいるのか、

何一つ思い出せないことに気が付いた。

あなたも分からないのね

ごめん…

ううん、私も同じだから

彼女は一つ息をついて、立ち上がる。

まずはここから出ましょう

彼女の言葉にうなづいて、自分も立ち上がった。
目の前には曇りガラスの引き戸がある。
その向こうには、月明かりがぼんやりと見えていた。
ここから出ようと、引き手に手を掛ける。

あれ

やっぱり、開かないわよね

え?

あなたが起きる前に

私も開けようとしたけど開かなかったの

どんなに力を入れて開けようとしても、

戸は固く閉ざされたまま開きそうにない。

中に入るしかないのかしら

彼女が振り向いた方、玄関の正面には大きな襖が鎮座していた。
ここがどこかも分からないのに、中に入るのには少しためらいがある。
けれど、玄関が開かないのだから、そうも言っていられない。

そうだね、中に他に人がいるかもしれないし

…………あれ?

開けようとしても、玄関と同じようにびくともしない。

開かない

えっ?

お互い顔を見合わせて動揺する。
ここから出られず飢え死にする未来が頭をよぎった。
背筋が凍ったその時、ふと玄関の隅に紙が3枚落ちていることに気が付いた。

御札と、"閉門の呪い"と…?

それ、三枚目の紙、この門と柄が似てるわ

本当だ、"閉門の呪い"……

もしかして、この門には呪いがかかってるのかな?

それなら、これを解けば、

呪いを解くことができるかもしれないわね

試してみよう

襖.png
​始まり
bottom of page